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クローズアップ2009:新型インフル 「フェーズ6では混乱」、各国に政治的思惑

クローズアップ2009:新型インフル 「フェーズ6では混乱」、各国に政治的思惑
http://mainichi.jp/select/opinion/closeup/news/20090520ddm003040107000c.html
 ◇WHOに待った
 新型インフルエンザの警戒度をめぐり、世界保健機関(WHO)が揺れている。WHO総会の関連会合では18日、英日中などが公然と警戒度引き上げに反対を表明。WHO側も引き上げ基準の見直しを示唆するなど、混乱は隠し切れない。引き上げ反対の背景には、世界的大流行(パンデミック)を意味する「フェーズ6」移行によるパニックを避けたい各国の政治的思惑も透けて見える。

 「チャン事務局長に提案したい」。新型インフルエンザに関する会合で、アラン・ジョンソン英保健相は「機械的判断で、警戒度を『6』に上げることはできない。もっと柔軟性を持つべきだ」と、引き上げに反旗を翻した。英国は感染者が100人を超えている。そうした状況が、「パンデミック直前」を意味する現在の警戒度「5」から「6」に引き上げる際の判断材料とみられている。

 その後、渡辺孝男副厚生労働相も「英国の発言を支持する」と追随。ニュージーランドや中国なども相次いで日英支持を表明した。

 新型インフルエンザ対策を担当するWHO当局者は「英国の要求は要するに警戒度を上げるなということ。公の場で発言をしたのは初めてだ」と語る。

 チャン事務局長は「『6』への引き上げに別の判断要素を加えるべきだという各国の提案を理解する」と引き上げ基準の見直しの用意も表明。譲歩の姿勢を見せた。

 ただ会合後、インフルエンザ対策の責任者であるケイジ・フクダ事務局長補代理は「最も重要なのは、科学的な根拠に基づき公衆衛生上の懸念に応えること」と記者団に述べ、各国の「政治的横やり」にくぎを刺した。

 英国が引き上げに反対した背景には「6」になれば「人々を混乱させ(当局への)信頼を失わせる可能性がある」(ジョンソン保健相)との憂慮がある。

 英保健省の声明によると「6」になった場合、世界中で、警戒態勢の強化や計画の発動につながる。AP通信によると、渡航制限や空港での検疫強化による「重大な経済的影響」や「大規模なパニック」も想定される。

 さらに、製薬会社が新型インフルエンザワクチン生産に重点を置き、「一部地域で季節性インフルエンザに対する薬品のストック不足を招く」(英保健省)ことも、反対の理由だ。英国では市民の日常生活は通常と変わりない。平穏な社会に無用な混乱を招きたくないという英政府の意図もうかがえる。

   ×  ×

 日本政府も「パンデミック」というイメージが風評被害を生み、国民生活や企業活動の混乱に拍車がかかることを懸念している。現時点では、新型ウイルスは弱毒性と言われている。現在の行動計画は強毒性の鳥インフルを前提に作られており、政府は柔軟運用を強調している。それでも企業は出張規制や営業の縮小などを余儀なくされ、感染の広がりが発覚した18日は東京株式市場の株価が一時9000円を割った。

 舛添要一厚労相は19日の記者会見で、「国民の生命と健康を守るということと、社会生活、経済活動とのバランスを取るということ」と述べた。政府は、国民に冷静な対応を呼びかける意味でも引き上げに慎重になっているようだ。

 警戒度引き上げを協議するWHO緊急委員会委員で、国立感染症研究所の田代真人・インフルエンザウイルス研究センター長は19日、英国などの主張を「まっとうな考え方」と評価。「6」引き上げが「感染が広がっていない国に、かえってマイナスの影響を与えることも考えられる」と話した。【鈴木直、ジュネーブ澤田克己、ロンドン笠原敏彦】

 ◇国内対策には影響なく
 警戒度が「6」に上がっても、日本の国内対策は基本的に変わらない。

 関係省庁が05年12月、最初に取りまとめた新型インフルエンザ対策行動計画は、WHOの警戒度をそのまま使い、対策を分類していた。

 しかし、専門家から「国内状況に限定して分類した方が対策が取りやすい」との声が高まり、今年2月に国内患者数に応じて4段階に整理した計画に改められた。

 「6」になれば、感染が認定された国への対応が必要になるため、帰国者の健康観察や、到着便の機内検疫の対象が増えることになる。ただ、政府はこうした水際対策を段階的に縮小していく方針で、厚労省の担当者は「引き上げの影響はほとんどない」と話す。

 なお、WHOの定義では「世界の2地域以上での持続的な地域社会レベルでの感染拡大」があれば、「6」への引き上げ条件が整う。英国やスペインでは、人から人への感染も起こっているが、WHOは日本も含めた米州以外の感染を「地域社会レベルとまでは言えない」としている。

 また、今回のウイルスは「弱毒性」とされ、感染しても軽症の場合が多いため、「重症度を考慮すべきだ」と引き上げ基準の見直しを求める声もあるが、WHOは否定してきた。【清水健二】

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