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クローズアップ2009:新型インフル国内初感染 神戸市、対策手探り

クローズアップ2009:新型インフル国内初感染 神戸市、対策手探り
http://mainichi.jp/select/opinion/closeup/news/20090517ddn003040026000c.html
 厳重な水際対策にもかかわらず、検疫段階を除き国内で初めて確認された新型インフルエンザ感染。専門家は、国内でもすでに感染が広がっていることを懸念している。一方、感染者が出た神戸市は、政府が行動計画を第2段階(国内発生早期)に移行させる前に独自の対策に踏み切ったが、休校措置を市内の一部にとどめるなど、市の行動計画を弾力的な運用に改めた。こうした対策に理解を示す声がある一方、批判的な意見もあり、自治体の対応の難しさも浮き彫りになった。

 ◇できる限りの態勢で--「まつり」中止には異論
 16日未明までに3人が感染濃厚(その後確定)となった神戸市。市は同日午前7時から、幹部ら約100人が参加して対策本部会議を開き、患者3人が通う県立神戸高校(灘区)が属する第1学区(東灘、灘、中央の3区と兵庫県芦屋市)内などの小中高校などを1週間休校にすることや、「神戸まつり」一部イベント中止などの対策を決めた。

 政府が対策本部幹事会で、行動計画を第1段階(海外発生期)から第2段階に移行させる前だった。

 早めの対策について神戸市の矢田立郎市長は「感染拡大防止に向け、できる限りの態勢を取っていくことが重要」と説明した。

 ただ、対策は従来の市の行動計画より限定的とした。もともと市の行動計画では、新型患者が発生した場合、兵庫県と連動して県内全域を範囲に対策をとることを定めていた。

 行動計画よりも小規模の区単位の範囲とした理由について、市教委健康教育課は「3人の患者が回復へ向かっていた上、世界保健機関(WHO)の情報で毒性がそれほど強くないとされているため」と説明する。だが、この日開かれた市医師会の会合では「高校生は学区を超えて交流している。休校措置は市内全域にすべきだ」と市を批判する意見も飛び出した。

 国、自治体とも、症状の重い鳥由来の新型インフルエンザウイルスを想定して計画を策定していた。しかし、今回、症状は比較的軽いとみられていることから、各自治体はどの程度の対策を取るべきか、頭を悩ませている。

 神戸市の対応について、広島市の担当者は「重症化するインフルエンザを前提としていたが、トーンが変わってきた。市内全域の学校をすべて休みにするかは慎重に考えたほうが良いのではないか」と話す。

 一方、「神戸まつり」を中止にした判断については評価が分かれた。堺市は「被害拡大を防ぐのが優先。人の集まるイベントを中止するのは妥当な判断だ」とするが、京都市は「これから夏にかけて大きな祭りが続くので中止を判断できるかどうかは悩むところだ。祭りの中止が検討項目であることは認識しているが……」と、観光都市ならではの苦悩を明かした。

 外岡立人・元小樽保健所長は「神戸市の対策は過剰なようにもみえるが、初めてのケースだから、何かミスがあっては心配だということで、幅広くやるべきことをやっておこうと判断したのではないか」と理解を示した。【野田武、高山梓、日野行介、曽根田和久】

 ◇すでに拡大の見方も
 海外渡航歴のない感染者が初めて確認され、感染拡大を懸念する声が出ている。

 「国内でも『人から人に感染する』という流行が始まった。監視強化によって、(発見されやすくなり)感染者が急増することもあり得る」。厚生労働省で16日会見した国立感染症研究所の岡部信彦・感染症情報センター長は語る。今後の見通しについて、「神戸がこれで収まるということにはならないだろう。季節的に楽観的要素があるが、ニューヨークの例でも、学校やきょうだいを通じて別の学校へと集団発生が広がっている。その状況に学ぶべきだ」と指摘する。

 16日開かれた関係省庁の「新型インフルエンザ対策本部」幹事会後の会見で、専門家諮問委員会委員長の尾身茂・自治医大教授は、神戸市以外で感染が広がっている可能性を口にした。尾身氏は「感染者の渡航者との接触がはっきりしないことから、(国内での人から人への2次)感染が始まったと考えている。症状が軽微ということが海外の例でも分かっており、(治療、診断しないうちに)感染がじわじわ広がっている可能性がある」と述べた。

 賀来満夫・東北大教授(感染制御学)は「渡航歴のない人の感染事例が見つかった段階で、感染はすでに国内で広がっているとみた方がいい」と話す。メキシコでの感染発覚から約3週間たち、米国では感染者はすでに3000人を超えた。米疾病対策センターによると、感染者は米国内だけで10万人以上と推計されている。

 賀来教授は「米国のように感染が広がる可能性がある。その場合は、重症化した人は病院で治療し、軽症者は自宅で静養してもらうなどして、被害の拡大を防ぐことが重要になる」と語る。【永山悦子、河内敏康、関東晋慈】

 ◆専門家冷静さ呼び掛け

 新型インフルエンザの初の国内感染者が確認されたのを受け、専門家に今後の対応を聞いた。感染拡大を前提に医療体制の強化を求めたほか、感染者への差別的な言動が広がらないよう、冷静な対応を呼び掛けている。

 ◇感染拡大を前提に--押谷仁・東北大教授(ウイルス学)の話
 メキシコや北米で大規模な感染拡大が起きていることを考えると、検疫強化だけで国内へ感染者が入ることを完全に防ぐことは非常に難しい。感染が広がってもほとんどの人は軽症で終わると考えられる。まず神戸市でどの程度感染が広がっているかを調べ、もし広がっている場合は今後も感染が拡大するとの前提で、患者が多発した場合の医療体制、重症者への対応をどうするのかを具体的に考える段階にきている。

 ◇差別生む過剰反応--岩崎恵美子・仙台市副市長(元仙台検疫所長)の話
 感染者への差別的な言動が出るのを見るにつけ、まるで伝染病予防法の時代に戻ったかのような印象を受けてしまう。このような反応が出た理由の一つに、毒性の強い新型インフルエンザを想定した対策に引きずられ、過剰ともいえる対策を取っていることが挙げられる。防護服姿での検疫や長期間の隔離などを見ていれば、医者であっても怖くなってしまう。従来のインフルエンザと同様の対策で対処できる。

 ◇水際で時間稼げた--岩田健太郎・神戸大教授(感染症学)の話
 今回の検疫での水際対策には一定の評価をしている。水際対策でウイルスの侵入を完全に食い止めることができないのは世界的には常識だ。さまざまな対策を講じたり、新型ウイルスについて情報を周知させるための時間を稼げた。「水際で防ぎ切れなかった」という評価は正しくない。今後は水際対策と感染拡大防止をどちらも実施していく必要があるが、どのくらいのバランスで実施するかは政治的な判断が必要だ。

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